【中小企業応援リレーコラム】
不況突破のための十二計 コスト削減の計《中小企業応援リレーコラム vol.8》
「不況突破のための十二計 コスト削減の計」 中小企業診断士 柳 義久 氏
(PDFはこちら)
今回リレーコラムを担当させていただきます柳義久(やなぎよしひさ)と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
■ コストにもいろいろあります
100年に一度の不況といわれ、経営はまさに今非常事態宣言状態にあると思われます。売上の増加なんて期待できない状況下にあっては、なんとかコストダウンを図って利益を確保していく、もし赤字ならば少しでもその額を縮小していく必要があります。
しかしひとくちにコストといってもいろいろありますから、まず損益計算書の構成について確認していただき、そのうえで、どこのコストを削減するのかを考えなければなりません。下の損益計算書の構成をご覧ください。
通常コストといえば、①と②をさすことが一般的ですが、経営的視点からは③④もコストとしての認識が必要になります。
営業利益を拡大するということは、②のコスト削減を図ることです。公式化すると、
営業利益=売上総利益-販売費・一般管理費(販管費)
となります。
先月のリレーコラムでは、「粗利益拡大の計」として①のコストをいかにして抑えるかを書いています。そこで今月は、②のコスト削減を中心に、③について多少ふれたいと思います。
■ 「販管費」を削減する
これ以上のコスト削減はできないと言われるかも知れませんが、こういうときだからこそ目先にとらわれず、少し中期・長期の視点で実現可能性の高い事業計画を見据え、人員や設備、資金など経営資源の適正規模を探る機会だと考えます。
「販管費」の項目には、給料や事務用品費、旅費交通費、広告宣伝費、支払家賃、支払地代などがあります。企業によって事情が違いますが、特に金額の大きい項目を再チェックしてみましょう。
・給与
給与規定はありますか?やってもやらなくても給与は同じ、できる人もできない人も給与は同じ、これではやっている人、できる人のモチベーションが下がります。支払総額が同じでも、社員にやる気を起こさせる給与体系を作りましょう。納得のいく給与体系によって生産性が向上するならばコスト削減と同義と考えてよいでしょう。
・通勤手当
会社への通勤のための費用はふつう全額会社負担です。複数の通勤経路がある場合無理のない範囲で通勤経路を見直すことでコスト削減ができる場合があります。
・旅費交通費
日常の営業活動等を効率的に進めることで無駄な費用を削減しましょう。「犬も歩けば、棒にあたる」的な営業スタイルもありますが、メールやファックス、電話により事前にアポイントをとっての営業活動がいいと思います。
・事務用品費
必要な時に必要なだけが原則です。ボールペンや消しゴム、必要以上に機能性の高いものが机の引出にあふれていませんか?ためしに一度みんなの引出から全部を拠出して再配分をやってみてください。
・広告宣伝費
商品・サービスの広告、求人広告、企業広告、試供品、ポスター・チラシなどの制作費、展示会参加費用などが一般的ですが、こうした項目の中でコスト削減余地はないでしょうか?
ホームページの制作費や維持費も広告宣伝費です。一度制作しただけ、メンテナンスの費用が高い、スタッフがいないなどの理由でコンテンツが古く更新されていないケースが往々にして見られます。古い情報のホームページは逆効果にもなります。探せば低価格でやってくれるスタッフもいますし、何よりも自社の若手社員が詳しい場合もあります。いくら掛かっているのか見直しをお勧めします。
・支払家賃・支払地代
スタッフが少なくなったのに広いスペースのままだったり、相場の高いときの家賃そのままの状態だったりしていませんか?契約書を再点検してみてください。家賃・地代の安い場所への移転も検討してみてください。
・労災保険料
全額会社負担となる労災保険料は、賃金額の4.5/1000~118/1000と事業種類によって保険率が大きく異なります。同じ製造業だといっても事業の災害率等によって4.5/1000~26/1000の違いがあります。運送業者さんなどの例で、運転手を社員に雇用するか個人事業主の運転手と業務委託契約を結んで仕事をするかによって年間の労災保険料の負担は相当違ってきます。疑問のある事業所の方は一度社労士に相談されると良いでしょう。
・租税公課
無駄な会費を払っていませんか。加入団体の見直しを検討してみてください。
■ 「営業外費用」を削減する
損益計算書の③のコスト削減の余地について見ていきましょう。
「営業外費用」の代表的な項目には、支払利息、手形売却損、社債利息、売上割引、為替差損などがあります。
・支払利息
短期借入金、長期借入金に対する利息です。今いくら借入金があって、金利はいくら払っているのかを確認しましょう。もし高い金利を払っているようでしたら、借り換えも検討してみてください。自治体の制度融資を利用できるかどうか確認してみてください。大幅に利息が低減される可能性があります。また、遊休資産があるようでしたら、早期に売却して借入金の返済に充当し、利息を削減することも検討してみてください。
・手形売却損
受取手形を期日前に資金化する必要がある場合、手形割引で対応しますが、割引率が手形の発行者によって相当違います。満期日まで持っていたいところですが資金繰りのため割引かざるを得ないとすれば手形の割引の順番など慎重に検討しましょう。
・売上割引
売掛金を期日前に現金等で受け取り、代金の一部を免除した場合、差額を費用として計上します。早期に現金回収をすることは結構なのですが、費用が発生しますのでコスト削減という視点からは留意が必要です。
・為替差損
輸出入取引を行っている場合、円建て契約をしていない限り、為替レートの変動によって為替差損が発生します。為替予約や通貨取引オプションを利用して為替差損発生リスクを抑えることもコスト削減に繋がります。
■ 今回のむすびに
「コスト削減の計」というテーマでリレーコラムを書かせていただきました。長引く不況の中で業務プロセスを見直し、ムダを削減していくことは重要です。
しかし余りにも過度なコスト削減は、ボディーブローとなって景気回復局面で立ち上がれないというリスクもはらんでいることを忘れないでください。
「コスト削減の計」とは、アスリートのようなスリムで筋肉質な経営体質を作り上げることだと考えてください。今はただただ鍛えて、次なる飛翔に備えましょう。









