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【中小企業応援リレーコラム】
不況突破のための十二計 人材活用の計《中小企業応援リレーコラム vol.13》

2009年12月21日

がんばる中小企業応援リレーコラム
「不況突破のための十二計 人材活用の計」
中小企業診断士 中津留 準 氏
(PDFでお読みになりたい方はこちら

今回リレーコラムを担当させていただきます 中津留 準(なかつる ひとし)と申します。よろしくお願いいたします。
 よく「企業は人なり」と言われますが、今回はその「人」の活用について話させていただきます。

1.人材とは
 一般的に経営資源を、ヒト、モノ、カネ、情報と分けて呼びますが、「人材」とは「ヒト」のことですね。自社が持っている他の資源の価値は正確に把握できますが、人材の価値がどれほどのものかはよく分かりません。人材の価値は仕事の成果で決まりますが、社員は個々に能力が異なりますし、同じ人でもやる気があるときとないときでは成果が変わります。そこで社員の能力を高めることと「やる気」を出させることが重要ですが、これが今回のテーマ「人材活用」です。

2.「やる気」につながるものは何か?
 やる気をださせることを専門用語では「動機づけ」と言います。動機づけについてはさまざまな研究がなされましたが、その結果、「やる気」に影響を与えるのは次の4つであることが分かりました。したがって、社長や管理職はこの4つのことに配慮して上手にコントロールすることにより、部下のやる気を引き出すことができます。

1) 報酬
  よい仕事をした社員に報いることは当然ですが、金銭的な報酬は出せない場合も多々あります。でもお金がすべてではなく、仕事ぶりや仕事の成果をきちんと評価して褒めることも報酬になります。部下は自分の仕事が上司に認められることは、なによりも嬉しいもので、次のやる気につながります。

2)職場の人間関係
  職場の人間関係が良好だと会社が楽しくなり、仕事の能率も上がりますが、人間関係がぎすぎすするとやる気も失せてきます。ただ人間は感情の動物なので、馬が合う人とか、虫の好かない人などがいて、各メンバーの努力だけではどうしようもない場合もあります。そのような場合、リーダーは皆が共有できる目標を設定して、「呉越同舟」の環境をつくることによって人間関係の問題解決を図るべきですが、それでも解決しない場合は組織を分けて、比較的気の合う人同士を組み合わせることも一法です。

3)上司のリーダーシップ
 社長や上司のリーダーシップが「やる気」に大きく影響します。よいリーダーの条件は、①仕事に真剣に取り組む、②先見性と決断力がある、③指示が的確で部下に無駄な仕事・無意味な仕事をさせない、④部下の評価が公平、⑤頼もしさ、あるいは優しさがあるなどであり、このようなリーダーはよいリーダーシップを発揮することでしょう。逆に①独善的、②優柔不断、③指示に一貫性がないなどが見えると士気が低下してよい業績は望めません。

4)仕事の性質
 自分の好きな仕事、やりがいの感じられる仕事、多くの人があこがれる仕事だとやる気が出ます。しかし、そのような仕事ばかりではありません。皆が嫌がる仕事、3Kの仕事などもあり、誰かにさせなければなりません。このような仕事をさせるときはリーダーがその仕事の意義を高く評価し、担当者を認めることにより、やる気を出させることができます。

3.実践の場での人材活用
1)人材育成
 人材活用するためには、先ず人材を育成しなければなりません。その教育手法は大きく分けると二通りあり、一つは仕事を通じて教育を行う「OJT(On the Job Training)」と呼ばれるものであり、もう一つは研修やセミナーなど、仕事を離れて行う「Off-JT(Off the Job Training)」と呼ばれるものです。どちらが重要かというと、仕事を通じて行うOJTの方です。そして、これは仕事を通じて行うのですから特に費用はかかりませんし、どの企業でもできます。そこで、先ずOJTを重点的に行い、可能な範囲で研修やセミナーなども併用するということがよいと思います。
 今回は、この仕事を通じて行う教育を取り上げます。部下には本人の能力を少し上回る仕事をさせると成長します。ただ、個々の能力に差があるため、その見極めが難しいですね。またそれぞれ性格もタイプも異なりますので、一律的な方法では成功しません。そこで、以下のような対応を考えていただくことをお勧めします。

 意欲的な部下や多少生意気なところのある部下の場合、強く、厳しく指導した方が成長します。一方、そうでない社員の場合はあまり厳しく接すると落ち込んでしまい、戦力ダウンになりますので、その兼ね合いを図りながら接することが大切です。何れの場合も、部下を信頼しているというシグナルを送りながらでないと期待通りの成果は出ません。

 指示した仕事、やるべき仕事を予定通りできなかった場合、「何故できなかったのか?」と理由を言わせる上司が多く見られます。しかし多くの場合、できなかった理由はいくらでもあります。上司は理由を聞いた後に叱って終わりとなり、部下は叱られたことが免罪符になって気が楽になります。「何故できなかったのか」とは聞かずに、「いつまでにやるのか」とか「どのようにやるのか」と聞くべきです。これに答えることで部下の責任が持続し、さらなる取り組みをせざるを得なくなります。そして、この解決に向かう努力が部下を成長させます。

 能力が劣ることが致命的な問題になるような業務は別にして、一般的な場合は能力的な問題で、責めたり叱ったりしてはいけません。責められても解決できないことなので、責められた部下は自信をなくして戦力ダウンにつながります。逆に精神的な病気を患っている場合を除き、意識や意欲がなかったり、足りなかったりした場合は大いに叱るべきでしょう。これは心がけ一つで変えられるものです。そして、意識や意欲が高くなれば能力も向上します。それでも能力向上につながらない場合もありますが、その場合は個人差の問題なので、その能力に合わせた仕事を与えざるを得ないでしょう。

 若い新入社員を教育する場合は、その段階を卒業した程度の数年先輩の社員につけて、その社員に全責任を持たせると効果が上がります。その先輩が介在することによりコミュニケーションが深まりますし、先輩社員のマネージャー教育にもなります。この場合、先輩社員には多少厳しく接してもついてきます。

2)仕事の評価
  仕事のやり方、仕事の成果をどのように評価するかにより、部下の仕事のやり方が変わりますし、やる気にも影響します。お客様の評価、仲間の評価も影響しますが、やはり最も影響を与えるのは上司の評価です。上司は方針を明確に示し、その方針に沿った評価をすべきです。
 
 例えば営業の場合、売上重視か利益重視かという問題があります。上司が利益にはあまり触れずに売上を上げた人や組織だけを褒めると、利益を無視して売上優先の傾向になります。また逆の場合もあります。他の業務も二つ同時に満たせない場合、どちらを評価するかによって、社員はそちらに流れます。

 リーマンショックによる不況の影響で、多くの企業で売上が減少しています。このような時期は、営業担当者も販売計画やノルマ未達が多くなります。そして、このことが士気に影響し、さらなる落ち込みにつながるケースもあります。そこで全体の計画は未達でも、個々の案件で成功すればその案件についての評価をきちんとして上げることが必要です。これが一つひとつの案件に積極的に取り組むやる気につながり、この積み重ねが計画全体の達成率を上げることにつながります。

 社長や上司がカリスマ的存在であると、上司が言った何気ない一言を、部下が勘違いして行動を起こすことがありますので、十分な注意が必要です。また部下からみて納得できないような命令を一方的に与えると、表面だけはそれに従うが実際にはしていないということも多くあります。
 昔、私が実際に見聞した例をお話します。ある卸売会社のワンマン社長が「営業マンは朝9時には出張しろ」と号令をかけ、その日から全員9時に出かけて、社長はご満悦でした。ところが、何とある喫茶店に全員集合し、毎日9時~10時は情報交換会をやっていたのです。あまり早く訪問すると取引先が嫌がるからという理由でした。
 別の例では、ある営業所に張り切り所長が就任し、営業マンが早く帰社すると叱ったり、機嫌が悪かったりするために、全員遅くまで出張するようになりました。ところがほとんどの社員は、夕方以後は親しい取引先で油を売り、頃合いを見て帰社したのです。これも遅い時間に訪問すると取引先が嫌がるという理由でした。

3)社員の処遇
 多くの企業では、過去に功労があり、最近の業務システムからはやや外れるような古参社員が存在しますが、彼らの処遇に悩む企業も多いと思います。今の業務システムを前提とした能力が不足する場合は中心的な役割につかすことはできませんが、その古参社員を冷遇した場合は、同年輩だけでなく、若い世代にも会社不信の念を抱かせます。若い社員は先輩の仕事ぶりを批判していても、その先輩が冷遇されると、自分も長年務めた挙句に冷遇されるのではないかと危惧するからです。そこで、現在の能力に応じた処遇を行いつつ、何らかの方法で栄誉を与えることも考慮すべきでしょう。特に業績に影響が出ない場面、例えば社内パーティーで乾杯の音頭をお願いするなどです。一方、実力のある若手社員にはそれに応じた権限を与えつつ、栄誉は与えないということでバランスをとることが必要です。

4)コミュニケーション
  会社の理念や方針を社内に徹底するとともに、社員の意見を収集するためのコミュニケーションは重要です。方法としては掲示板や回覧板、連絡帳、メーリングリストなどさまざまな方法がありますが、できれば直接話合う機会を増やすことがよいと思います。直接話合うことが最も信頼関係を深めますので、この機会は多いほどよいでしょう。ただ、上司が特定の人と接する機会が多いと見られると他の人が嫉妬してチームワークが崩れますので、特に注意が必要です。

4.安心できる職場づくり
  人材にやる気を出させるには、労働環境を整備して、安心できる職場づくりをすることが必要です。もしも、まだ対応されていない場合は、以下をご参考に整備を進めてください。

1)労働条件
・ 所定労働時間 : 1日8時間以内、週40時間以内(一部の業種では例外あり)…業務特性上、毎日異なる時間・毎週異なる勤務日になる場合は、あらかじめ労働基準監督署への届出が必要です。他に裁量労働制、年俸制度などもありますので労働基準監督署でご相談ください。
・ 休暇制度 : 勤続期間6カ月以上で10日、以後順次増やします。

2)就業規則
 従業員10名以上の企業は作成が義務付けられています。9名以下の場合は義務付けられてはいませんが、従業員の信頼を得るためには作成することが望ましいと思います。

3)労働保険
・ 労働者災害補償保険 : すべての企業に加入義務があります。アルバイトも含めてすべての従業員が対象です(届出先は労働基準監督署)。中小企業は社長も現場で活動をする機会が多いため、労災があると安心です。各市区町村にある労働保険事務組合に保険事務を委託すると、経営者も加入できますので、ご検討をお勧めいたします。

・ 雇用保険 : 所定労働時間が週20時間以上の従業員が対象で、該当する従業員を雇用する企業は加入義務があります(届出先は公共職業安定所)。

4)社会保険
 社会保険には健康保険と厚生年金保険があります。法人企業、従業員5名以上の個人事業主は加入義務があり、5人未満の場合は、従業員の過半数の同意があれば加入できます(届出先は社会保険事務所)。
 
5)退職金制度
 義務化はされていませんが、退職金制度がある方が従業員の信頼度が高まります。独自に設定するのは負担が大きいため、下記の制度ご利用をお勧めいたします。

・ 中小企業退職金共済制度 : 従業員ごとに一定の掛金を納めることにより、その従業員退職時に掛金・期間に応じた退職金が支払われます。掛金は全額非課税となります(申込先:(独)勤労者退職金共済機構)

5.人材の確保・育成を支援する公的助成制度
最後に人材の確保・育成のための、平成21年度公的助成制度をご紹介いたします。問い合わせ先は(  )に記します。

・ 地域求職者雇用助成金
 (都道府県労働局)
 同意雇用開発促進地域、過疎等雇用改善地域において事業所を設置し、その地域に移住する求職者を雇い入れる場合等

・ 中小企業基盤人材確保助成金
 (雇用・能力開発機構都道府県センター)
 創業や異業種に進出して6カ月以内の企業が、その事業に必要な基盤人材を雇用する場合

・ 中小企業人材能力発揮奨励金
 (雇用・能力開発機構都道府県センター) 
 IT等を活用して雇用環境の高度化を図るための設備の設置・整備を行い、新たに従業員を雇用する場合

・ 地域雇用開発能力開発助成金
 (雇用・能力開発機構都道府県センター)
 同意雇用開発促進地域の事業所が、従業員の能力向上のための訓練を行う場合

・ キャリア形成促進助成金
 (雇用・能力開発機構都道府県センター)
 キャリア形成促進のための職業訓練を行う事業所等

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