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【中小企業応援リレーコラム】
不況突破のための十二計 新商品成功の計《中小企業応援リレーコラム vol.16》

2010年3月11日

がんばる中小企業応援リレーコラム
「不況突破のための十二計 新商品成功の計」
中小企業診断士  大坂 隆洋 氏
(PDFでお読みになりたい方はこちら

 今回、リレーコラムを担当させていただきます中小企業診断士の大坂隆洋(おおさかたかひろ)です。よろしくお願いいたします。

 昨今の景気の状況を見ると、先行きが不透明でなかなか上昇の気配を見出せないというのが現状です。新たな投資を簡単にできるような経済情勢ではありませんが、それでも企業にとって新商品は必要不可欠なものです。むしろ好景気で右肩上がりに売上げが上がっていくような時よりも、現在のような不況の時のほうが、既存の商品でなかなか収益を伸ばしていくことが難しい分、企業にとって新商品の持つ意味はより大きいものになってきます。
 しかしながら財務基盤は厳しい状況となり、資金の調達も簡単にはできません。仮に新商品を投入できたとしても、消費は冷え込んでおり、成功させるのは至難の業といえるでしょう。

■なぜ新商品は出さなければならないのか?
 そもそもなぜ、企業は新商品が必要なのでしょうか。特に不況時にはただでさえ商品は売れずに収益が減少します。そんな時期に投資を行ってリスクを冒してまで新商品を出す必要はあるのでしょうか。
 確かに、財務状況が厳しい環境での新商品投入は、リスクが大きくなります。そもそも景気がよくても新商品はなかなか成功しないものです。しかし商品にはライフサイクルがあります。市場に投入されたすべての商品は「導入期」、「成長期」、「成熟期」、「衰退期」という四つの段階を経て淘汰されていきます。このサイクルの期間はそれぞれの商品によってまちまちですが、いま「成長期」から「成熟期」に差しかかるような売れ筋の商品も、やがては「衰退期」を迎え、代替として新たに登場してくる商品に淘汰されてしまいます。このメカニズムは不況だからといって待っていてはくれません。仮に会社唯一の商品が「衰退期」を迎えたときに、代わりの新商品をまったく考えていなかったとしたら、その会社はどうなってしまうでしょうか。

■企業の成長を支える新商品
 別の面からも考えてみましょう。現在のようなデフレーションの状況下では、全体経済の物価は下落していますから、商品の販売単価は簡単に下落します。一方で人件費などのコストは下方硬直性があり、なかなか簡単に下落してくれません。これらのコストを削減するには相当な努力が必要となるはずです。したがって好景気時と変わらない経営をしていると、結果として売上げは減少するがコストは下がらずに、利益は大きく圧縮されてしまうことになります。もちろん経営努力としてコストを削減することは大いに必要なことですが、それだけでは会社は成長できません。このスパイラルを回避し、継続的に会社を成長させていくためには新商品の開発・投入が必要になるわけです。
 消費は低迷をしているといっても、すべての商品が売れなくなるわけではありません。現に、この不況下に業績を大きく伸ばしている企業もあります。今回の不況では、ユニクロや餃子の王将あたりがその代表格でしょうか。これらの企業も業績を伸ばすために新商品の投入、新規店舗の出店を行いながら成長をしてきています。決して守りの姿勢で業績を伸ばしているわけではありません。最近では近年最高益を出し続けているマクドナルドも新商品を短いスパンで定期的に出すようになっています。このように常に新しいものを出していくということは、企業の成長にとって不可欠なのです。

■大切なのは戦略
 さて、新商品を成功させるために、経営者レベルではいったにどのような点に注意をする必要があるでしょうか。こうすれば絶対に新商品は成功する、というよう夢のようなメソッドは存在しません。やはり試行錯誤を重ねながらリスクを減らして、少しでも成功する可能性が高いと考えられる商品を作り上げていく他に道はありません。では、どこにポイントがあるのでしょうか。私は、会社の方針・戦略に沿った、一貫した新商品の開発が重要であると考えています。そのための第一歩は、新商品の方向性を決める戦略です。方向性と言っても、どのような商品を開発するか、ではなく、会社としての戦略上の方向性です。一般的に、企業が新商品を開発、投入していくための方針・戦略としてはコストリーダーシップ戦略・差別化戦略・集中化戦略の3つが考えられます。これらはM・ポーターが提唱した3つの基本戦略によるものですが、いずれも自社製品が市場において有利な地位を占めるための方策となっています。コストリーダーシップ戦略は、低コストの商品を開発し、コスト面で競合商品から優位性を発揮するという戦略です。次の差別化戦略は、自社の商品を機能やデザイン・付加価値などの部分で特徴を出し、他社の商品と違いを訴求する戦略です。3つ目の集中戦略は、特定の顧客などに集中して低コストを実現するか、もしくは差別化を図る戦略です。集中戦略では、ケースによって低コストと差別化の両方を達成できる場合もあります。これら3つの戦略のうち、コストリーダーシップ戦略は、大きな資本を投入し、大量生産・大量販売によって実現が可能となるため、資本の小さな中小企業ではなかなか取ることはなかなかできません。従って中小企業では、差別化戦略もしくは集中戦略を考えることとなります。
 また近年では、ブルーオーシャン戦略という、独自の新しい市場を切り開き、競争の存在しない市場を作り出すという戦略も出てきています。この戦略は任天堂の家庭用ゲーム機「Wii」が、すでに飽和状態と化していたゲーム機市場で、それまではターゲットとされていなかった子供や大人をターゲットとし、他のゲーム機と競争のない市場を開拓して成功したことで知られています。ブルーオーシャン戦略は、それまでにない市場を開拓するので、そこに競争はありません。従っていったん成功すると非常に高い収益性を発揮します。しかし、実現するためには、それまでの業界の常識を打破するようなイノベーションが必要となります。
 新商品成功のためには、いいアイデアが思いついたなどと思いつくままに商品を開発していくのではなく、まずこうした大きな方向性を会社としてしっかりと決めた上で商品の開発に取り掛かっていくということが重要です。特に不況ですから、ロスや失敗は極力避けなければいけません。最初に会社としての軸を作っておかないと、開発やプロモーションの段階で試行錯誤しているうちにどうしてもブレてしまいます。そのブレが大きなロスの原因となってしまうのです。

■フレームワークを情報の収集と分析に活用
 戦略の方向性が定まったら、新商品開発のための情報収集・分析が次のステップです。新商品開発では収集した情報をもとに、ターゲットとする市場はどこなのか、他社の製品と差別化する部分はどこなのかを分析していきます。必要な情報は業種や扱う商品により変わりますが、市場動向や、他社の動き、顧客のニーズ、他社商品のスペックや顧客の評価など多岐にわたります。その際に収集する情報があいまいなものだったり、分析に主観が入ってしまったりすると、その情報や分析は何の意味も持たなくなってしまいます。
 収集した情報を分析・評価をするには、「フレームワーク」と呼ばれる枠組みを利用すると効率的に行えます。例えば、自社が狙うべきターゲットを絞り込みたい場合は、「マーケットセグメンテーション」というフレームワークが活用できます。これは人口統計・地理・心理・行動の4つの大区分から消費者のセグメンテーションを行っていくフレームワークです。あらかじめモレやダブリがないように4つの要素が分類されているため、細部にわたって分析することが容易にできます。また、顧客や市場から自社の商品がどのように評価されているのかを分析したいときは、「ポジショニングマップ」という2つの評価軸を組み合わせた「フレームワーク」を用いることで、自社商品と他社商品の違いを視覚的に分析することができます。
このようなフレームワークは数多くあり、その用途に適したフレームワークを活用することにより、情報の整理、分析の効率が飛躍的に伸びるだけでなく、客観的に整理されたデータを得ることが可能になります。
こうしたフレームワークはプロモーションにも活用できます。一貫した情報を利用することにより、開発からプロモーションまですべて連動させた施策を打つことができるようになるでしょう。

一般的な新商品成功のためのプロセスを簡単に見てきましたが、特に簡単に資金を調達することのできない不況時では、こうしたプロセスにおいて自社の資源を有効に活用していくことが重要となります。資源とは人・モノ・カネだけでなく、自社の持つチャネルやブランド価値などを含むすべてです。新商品開発・導入に際して、いかにリスクを軽減しながら全体としてのロスをなくしていくのか。自社が扱っている商品ラインから離れなければコストは少なく済みますし、また自社の持つブランド価値を利用できれば、プロモーションの費用も削減できることになります。新商品の成功のためには、方針から開発、実際の販売まで一貫した戦略のもとに行うことが、リスクが少なく、ロスも少なくなるということにつながることからとても重要です。
 不況時に新商品を成功させるためには、自社では何ができるのかという視点に立ち、あまりマーケットインにこだわりすぎず、時にはプロダクトアウトの視点も織り交ぜる必要があるのではないでしょうか。

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