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シーンに応じたリーダーシップが苦境を救う《中小企業応援リレーコラム vol.27》

2011年2月23日

がんばる中小企業応援リレーコラム
「どうする!反転攻勢の経営」~景気回復の芽を伸ばせ~

第11回 「シーンに応じたリーダーシップが苦境を救う」
中小企業診断士 小田明彦 氏

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 2月号のリレーコラムを担当する小田明彦と申します。千代田区内の小規模企業に勤めながら、医療・福祉・健康食品等の業界の企業様や商店街の皆様を支援しています。

■経営でリーダーシップはなぜ大切か
 リーダーシップの意味については色々な考え方が述べられていますが、私は一言でいえば「部下のやる気を引き出すこと」だと思います。特にこの不況のご時世、人件費を増やさずに実績を向上させるためには、一人一人にやる気になってもらい生産性を上げるしかありません。

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 図は、一般社員の人々が社長や上司のリーダーシップのどのような部分を評価しているかを調査した結果(2007年マクロミル社によるインターネット調査)です。上司自身の資質向上に関することよりも部下の士気に直結するものが多く挙がっており、部下から見ても自分たちのやる気を引き出してくれることがリーダーシップの要件だと間接的に物語っています。
 また一般に経営者自身が考える“トップに求められる資質”として、「決断力」「行動力」「先見力」が挙げられますが、企業を経営するためには部下の協力が不可欠ですので、部下にやる気になってもらうことの方が前提条件だと言ってもよいでしょう。

■リーダーシップ論の変遷
 リーダーシップ論はマキャベリの『君主論』(1513年)にはじまると言われますが、企業経営に当てはめて論じられてきたものをまとめると、次の4つとなります。
① 「特性理論」:リーダーは個人の資質や性格で決まると考えた
② 「行動理論」:リーダーが取っている行動を様々に類型化した
③ 「2次元論」:リーダーシップは業務と人間関係の2つの次元から構成されるとした
④ 「状況適応論」:普遍的なリーダーシップはなく、変化に対応する必要性を説いた
つまり、最初は「リーダーはどうあるべきか」という議論をしていたのが、研究の進展と共に「リーダーシップは複数の要素から構成され、しかも一つの型にこだわってはいけない」ことが明らかになってきた訳です。このことを泥臭い話をネタに考えてみましょう。

■リーダーシップに関する私の経験

 15年前に大手製薬会社から小さな薬卸売会社に転職して営業所長となった私は、懸命に新規開拓を行って、担当ルートの売上を3倍に伸ばしました。するとそれを見た所員たちは、自らも新規開拓に勤しみ出し、営業所内は予算達成に向けて盛り上がり、全員が社長から臨時ボーナスまで頂きました。
 その後、今度は本社の取締役へ異動となりました。私は前の経験を踏まえて、他人が嫌がる仕事を買って出て、遅れている仕事も自分が引き受け、万事率先垂範して働きました。ところがその結果は、私はただの 「いい人」と舐められ、社員たちは仕事に精を出すどころか、むしろ次第に積極性を失い、すっかり沈滞ムードが広がってしまったのです。
 前者のケースでは私は経営陣ではなくプレイングマネジャーでしたので、前述の「2次元論」で言えば、売上向上と言う「業務」の面で熱心であれば足りました。しかし後者のケースでは私は経営陣の一員であったため、「業務」面に加えて「人間関係」にも熱心な事が求められていたのです。

■リーダーシップは会社の大きさで決まる

<小さな会社の場合>
 社員が10名ほどの会社なら、社長一人が全員とフェイス・トゥ・フェイスのコミュニケーションが可能なので、社長一人で全員を管理した方が効率が良いと考えられます。この場合、会社の目標や戦略を立てるのも、現場で先頭に立ったり部下からの相談に乗ったりするのも、全て社長の仕事になります。研修も社長自身が受け、社員への研修は、社長が内容を噛み砕いたうえで再研修を行うことになります。
 行動理論学者だったリッカートは「システム4理論」の中で、リーダーシップを「独善型」「温情型」「相談型」「集団参加型」の4つに分類し、「集団参加型」が最も優れたものだと述べました。しかし小さな会社では社長がマネジメントに割ける時間は限られ、一方で部下は、社長が普段から身を粉にして働いている姿を見れば自然と「社長について行こう」と思います。このため小さな会社の場合は、「集団参加型」と「相談型」にこだわらず、「独善型」「温情型」を取り入れる必要があります。
<中堅企業の場合>
 一方社員が数十人以上の会社になってくると、もはや社長一人で全員の管理は難しくなり、中間管理職が必要となります。この場合社長は、一般社員と同じ業務は行わず、目標設定と戦略立案、そして教育研修に専念することになります。
 組織が大きくなれば、社長の考えを社員一人一人に浸透させるのは難しくなり、また部門間の葛藤も起こります。そのため、前述の「相談型」や「集団参加型」のリーダーシップを発揮して、意図的にコミュニケーションをとったり、意見の調整を図ったりすることが中心となります。

■現場に降りなければリーダーシップは完成しない
 以上が基本形ですが、特に中堅クラスの企業で見落とされがちなリーダーの要件が一つあります。このクラスになると社長は社内で過ごす時間が長くなりますが、直接得意先を担当していなくても、現場に降りる時間と手間を惜しまないことです。何故なら社長自身が得意先を訪問すれば、一営業マンには滅多に語られない裏情報を得られ、戦略を練るという社長本来の仕事に直結する効果があるからです。またここで得た情報を担当者にフィードバックして新たなビジネスにつながれば、その部下は実績が上るばかりか、貴重な学ぶ機会となり、社長への信頼はより一層厚くなります。
 中小企業には大企業のようにマーケティング担当の役員などはいませんから、不足する情報は社長自身が補うしかありません。しかし逆に複雑な意思決定プロセスも無いのですから、現実を踏まえた“次の一手”を迅速に打てます。それに基づいた指示であれば、部下は「社長は分かっているのだ。やってみよう。」と思うでしょうし、教育研修の際も「忙しいけど、確かに必要だ!」と感じてくれることでしょう。

■どんな性格でもリーダーシップは発揮できる
 「特性理論」がもはや過去のものであることからも分かるように、絶対的なリーダーシップというものはありません。また専制型リーダーシップは次元が低いものだとされていますが、このタイプで成功している社長は今でも多数いらっしゃいます。
 私の考えでは、良いリーダーシップは、どんなキャラクターであるかよりも、自身のキャラクターをどれだけコントロールできるかで決まります。ではその「コントロール」について考えてみましょう。
 現在支持を集めているリーダーシップ論は「状況適応論」ですが、ハーシーとブランチャードは共同研究「SL理論」の中で、組織の中で必要とされるリーダーシップは部下の成熟と共に、「指示型」→「説明型」→「参加型」→「委任型」と変遷すると述べています。最初のうちは親のように手とり足とり、慣れてきたら指導員からプレイングマネジャーと徐々に身を引いて行き、最終的には任せても大丈夫な状態にする、という意味です。
 全て通してではイメージし難いので、最初の「指示型」の範囲で考えてみましょう。
 寄せ集めのメンバーでスタートした会社があったとします。みんな向いている方向がバラバラで、一度に指示をしても伝わりません。そこで、個々に対して厳格に指示を与えますが、厳しくばかりしているとソッポを向かれてしまいます。逆に誉めてその気にさせようとしても、誉めてばかりでは図に乗ってしまいます。そこでリーダーに求められるのが、一方に偏らず、必要に応じて普段と逆の自分を演じて、自分の言動をメリハリの利いたものに保つことです。極端な例ですが、普段仏さまのような社長に叱られたらば、部下は叱られる理由がそれなりにあると理解します。
 どのような性格の社長であっても、ここ一番で自身のキャラクターを使い分けて「本気」を伝え切っていれば、部下は次第に社長の言葉から耳をそらさないでいてくれるようになり、やがて「説明型」のリーダーシップへ移行できるのです。

■よりよいリーダーとなるために
 いくつかのアンケート結果を見ると、社員がリーダーに期待する要件として「ブレないこと」が必ずと言ってよいほど挙げられています。確かに些細な事に一喜一憂しているようでは、リーダーとしての魅力は乏しいものですし、座右の銘があることは人間的魅力につながります。しかし一つのスタイルに固執して同じパターンの繰り返しでは、変化に対応できず、会社や部署を成功に導けません。
 とりわけ過去に成功体験を積んだ人は、それに頼る傾向がありますので注意が必要です。自分のキャラクターをできるだけ客観的に見直して、それが現在の立場に求められるリーダーシップに適しているか、また自分にメリハリをつけるために演じるべきスペックはどのようなものかを、一度俯瞰してみることをお薦めします。
 「そうは言っても性格は仕方ない」とお考えになる方には、心理学系の本に参考となるものがあります。一例を挙げれば、「性格は変わる・変えられる(渡邊芳之・佐藤達哉共著 自由国民社)」などは、入門書的に分かりやすく書かれています。



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