業務の効率化を職場の環境から考える《中小企業応援リレーコラム vol.2》
「業務の効率化を職場の環境から考える」
中小企業診断士 大坂 隆洋 氏
中小企業診断士の大坂隆洋と申します。よろしくお願いいたします。
経営者・幹部のみなさん、新しい1年が始まりました。今年は昨年以上に厳しくまた、大きく変化のある1年となりそうです。
さて、100年に一度と言われている未曽有の大不況を乗り切っていくために、考えていかなければならない経営テーマはいくつかあると思いますが、今回は職場の環境に焦点を当てて業務を効率化していく方法について掘り下げて見ていきたいと思います。
■モチベーションのコントロール
近年、従業員の業務効率を高める時に重要視されてきているのが従業員のモチベーションです。モチベーションが高いということは、仕事に対する意欲が高まっている状態ですので、結果として業務の効率・能率そして仕事の成果そのものがよくなると考えられています。この従業員のモチベーションについて会社側が積極的にマーケティングを行い、従業員が会社に対し何を求めているのかを把握し、マネジメントすることにより、従業員満足度を高めていきます。昔から一般的に賃金上昇や昇進などが従業員のモチベーションを上げると考えられてきていました。しかしながら、地位や役職というものは無制限にあるものではなく、賃金もなかなか簡単に上げるというわけにはいきません。なるべく少ない投資で業務効率を上げてあげて行きたいものです。
■職場環境の重要性
そもそも、従業員満足とは何でしょうか。みなさんも良くご存知のマズローの欲求5段階説から考えてみましょう。マズローは「人はそれぞれ下位の欲求が満たされるとその上の欲求の充足を目指すようになる」と考えています。この欲求が満たされていく過程が従業員が仕事に対して満足し、モチベーションを高めていける状態となります。企業にとって従業員が最上位の欲求を充足させられる状態というものが最良ですが、下位の欲求が満たされなければ上位の欲求は満たされることはありません。そして、これら欲求の土台というべき「生理的欲求」・「安全欲求」は職場の環境に依存するものです。したがって、職場の環境を良いものにすることが、業務効率の改善、向上になくてはならないほど重要であるというわけです。
このような職場環境の重要性は、単純な動きを繰り返し行う労働の現場でも、斬新且つ柔軟な発想が求められるような職場であっても、なんら変わるものではありません。職場環境への取り組みはアメリカのグーグルをはじめとする大企業で積極的に取り組まれている点からもその重要性はお分かりいただけると思います。良い職場環境とは、機能的で居住性の高い空間であると考えます。機能的で快適な職場環境は従業員の帰属意識を高めるという研究結果もあり、職場環境へ注意を払い、改善を行うということは、業務の効率を上げるだけではなく、離職率が低くなる等のさまざまな効果があります。とはいえ最新鋭の設備が揃ったオフィスへの移転や、大規模なオフィスの改装を行うということは簡単にはできません。そこで、簡単にでき、それでいて重要な職場環境改善のポイントをいくつか例示していきたいと思います。
■職場環境改善のポイント
1)「整理・整頓・清掃」
職場の環境を改善するうえで基本となるのは「整理・整頓・清掃」です。どんなに最新の設備が整ったオフィスでも、「整理・整頓・清掃」がおろそかになってしまうと、そこは快適な環境ではなくなるし、せっかくの機能性も落ちていくものです。これでは効率も上がりません。「当たり前」のことのようですが、とても大事なことです。うちの会社はできていると思っていても、もう一度見直してみることをお勧めします。
2)室内の空気環境の調節
空気の汚れ、暑さ、寒さなど、働きやすい快適な環境に保ちましょう。長時間職場で働く従業員にとっては非常に重要なことです。エアコンを一律に温度設定しているだけでは快適な環境にはなりません。こまめな温度調節や、噴出し口の調節などを心がけてください。省エネ対策にもなります。それでも感じる温度は個人差がありますので、ひざ掛けを会社で準備するなどの配慮が必要でしょう。その他の対策として分煙や加湿器・空気清浄機を設置するなどちょっとした工夫で簡単に改善できるものが多いです。
3)その他室内環境の再考
室内の明るさや音に関する部分です。これも空気環境と同様に基本的なことですが、重要です。仕事をしやすい雰囲気を作るということだけでなく、仕事の内容等に適した環境作りをするための基礎となります。①室内の色彩環境や光源などを見直す、②作業場内の騒音源となる機械を遮音材で覆う、③低騒音のOA機器を導入する、などの対処が考えられます。
4)心身の疲労を回復するための施設の整備
休憩室など心身の疲労を回復するための施設を設置するだけではなく、常に快適な状態を保つことにより、より良い環境を提供します。休憩室のイスをちょっといいものに変えてみる、従業員が気軽に食べられるお菓子を用意しておく、などなど従業員がリフレッシュしやすい環境を作っていきましょう。
また、従業員が常に利用する環境ということで、近年トイレを重視する人が増えてきています。女性の派遣社員などは、派遣先ではまずトイレの環境を確認するといいます。トイレ環境の整備は、重点項目として取り組んでも良いのではないでしょうか。例としては、トイレ内に歯ブラシなどの小物を置くスペースを設置する等がありますが、全体としてのポイントは施設を良くするということではなく、清潔で使いやすい状態を保つという点になります。
5)高齢者への配慮
少子高齢化の時代背景から、高齢者を雇用する機会は今後増加していくと考えられますが、経験豊富な高齢者を積極雇用し、パフォーマンスを上げることができれば、企業として大きな戦力となります。しかし50歳を超えると、文書を読むために必要な視力を得るのに20歳代の約3倍の照度が必要になるなど、高齢者は身体的な諸機能の低下により生産性が低下します。そこで作業用の特別照明を設置する・拡大鏡を準備するなど、施設面の整備を行うことにより、諸機能の低下を補うことも可能です。全従業員一律の作業環境ではなく、こうした能力に応じた配慮も必要です。
■最後に
これらの職場環境改善の取り組みを行っていく際のポイントは、よりトップに近い人材に担当させることです。トップが率先して環境への配慮を行う姿勢を見せることで、社内全体として職場環境への意識が高まり、さらに良い環境へと変化していくでしょう。
今回例として挙げたもの以外にも改善策はいくらでもあります。たとえば、PC作業用のマウスの大きさを作業者の手のサイズに合わせるために大小各種用意するなど・・・ちょっとしたことでも大きな効果があるはずです。業務効率改善のために、それぞれの職場に適したさまざまな改善策を積極的に取り入れていくという風土をまずは作ってください。









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