vol.3 株式会社ヤマヤコ-ポレ-ション 代表取締役 山谷一秀社長
■鉄鋼二次製品、金物卸売業「株式会社ヤマヤコ-ポレ-ション」
今回の企業探訪はでは、代表取締役社長 山谷一秀氏にお話を伺いました。
東京の千代田区には誰もが知っている秋葉原の電気街や神保町の書籍街、岩本町の繊維街など伝統的に有名で日本一の集積を誇る産業があります。chibizトピックスでも何度か取り上げました。
今年から、私たち、産業振興チームではこれらの集積された産業に焦点を当てて「千代田の産業クラスター」としてさらに活性化してもらおうと動き始めています。
しかし、江戸・明治の昔には有名だったけれど今は通りの名前にひっそりとその名残を留める産業もあります。その一つが神田金物通り、鍛冶町にその名残をのこす『金物業』でして、正確にいうと鉄鋼二次製品と金物卸売業です。 (株)ヤマヤコ-ポレ-ションは鉄鋼二次製品からスタートし、戦後に建築金物の卸売業に転進して、いまでも成長を続ける中堅商社です。
今回は厳しい経営環境の中、金物問屋の2代目として会社を成長発展させてきた山谷一秀氏から、その成長発展の秘密をお伺いしました。
■現在の金物業界
成長の秘密をお聞きする前に、現在の金物業界の説明からお聞きすると、ずばり一言
「5K」
「5k」とは・・・!!?? (1)きつい、(2)汚い、(3)厳しいまではわかりますが、その次の(4)は給料が低い、(5)は休日が少ない、ということで、少々自虐的なご発言。
このようなことで、金物業界の後継者難は慢性化しており、企業数は減る一方とのこと。特に最近は中国製品が日本製の半値近くで入ってきて、出荷数量はそう変わらないのに、売り上げはピーク時の半分程度になっている企業が一般的とのこと。
■問屋が生き残る道とは
情報革命と物流革命の影響で消費者とメーカーの距離がどんどん縮小する中で、その中間にいる問屋が生き残る道は3つしかないと山谷社長はおっしゃいます。
戦略1:メーカーになる・・・リスクを負って自社のブランドで企画して販売する。
戦略2:小売になる・・・消費者に直販する。
戦略3:ひと手間加工して付加価値を高める・・・少量・多品種・多頻度・単納期への対応
文具で有名なプラスという会社があります。もとは千代田区(現在は文京区に移転)で文具の卸売をする千代田文具という社名でスタートした会社ですが、早い時期から製造部門にも進出し(戦略1)、いつしか製造が中心となっていまでは文具関連のメーカーとして独自の地位を築いています。さらに消費者へ直接販売する直売部門としてアスクル事業(戦略2)を大成功させたことは有名です。
(株)ヤマヤコ-ポレ-ションは戦略3です。徹底的に少量・多品種・多頻度・単納期への対応を志向してきたのが成功の要因です。ですから企業規模に比較して支店や関連会社が多いのでしょう。
このような戦略が成功の秘訣であることに間違いはありませんが、(株)ヤマヤコ-ポレ-ションの成功の秘訣は「家族的経営」にあると感じました。
■都心で花開く家族的経営の極意
(1)社内の良好な人間関係による社員の高い定着率
(2)社員寮や社員旅行といった福利厚生活動
(3)結婚記念日には鉢植えを、奥さんの誕生日には花束を贈るなど家族を大切にする企画
(4)定年制はなくして元気に働けるまで働いてもらう制度
(5)社員の採用に関しても即戦力の中途ではなく、新卒採用でじっくり育成する
などなど、とても家族的なものを感じさせます。そして何よりも
(6)人間的で温情溢れる社長の存在 です。
私も仕事がらさまざまな経営者の方にお会いします。まだまだ修行不足で社長の経営能力や事業センスはなかなかすぐには分からないことも多いのですが、社長の社員への考え方、思いというのはお話をしていればすぐに分かります。私は「性善説」なんだとおっしゃる山谷社長ですが、社員の方々への高い信頼感が話の中に随所に感じられ、山谷社長は社員からみれば本当に安心して働くことのできる、そして一生をかけてがんばることのできる社長であると感じました。
どちらかといえば現在の日本企業はドライな人間関係を肯定し、職場、しかも仕事に関してだけをちゃんとやってくれればそれでいいという風潮が強まっている気がします。少々妙な言い方ですが全人間的、全生活的な家族的会社もこれからの一つのやり方だなあと感じました。
もちろん社員をただただ甘やかすということではありません。その典型が給与制度。なんと社員一人別の損益計算書を作成し、給与はそれに基づく完全な歩合制を導入しています。完全な歩合制ですから、退職金制度は数年前に会社都合の退職金額で全部精算し、ボーナスはゼロ。究極の成果主義といってもいいと思います(もちろん最低金額の保証はきっちりとしておられますが)。「優しさ」と「厳しさ」のメリハリをしっかりつけているという印象です。
■ちょっと怖い話
少々話題を変えて、山谷社長からお聞きしたぞっとする話を一つ。
建築金物材料の代表選手はステンレスです。ステンレスにもいろいろあるらしく、クロム18%、ニッケル8%の18-8ステンレスが代表的でその名のとおり錆びない。ところがニッケルが入ってないのがあって、これは値段は安いがすぐに錆びる。錆びるので建物外部に使うのには不適切で主として内部用の金具に使われるそうです。
ニッケル入りは磁石につかない、ニッケルなしは磁石にひっつくということで簡単に区別ができるのだそうですが、なんと最近磁石にひっつかないニッケルなし激安ステンレスが外国から入ってきているとのこと。18-8ステンレスとすぐに区別がつかないけれど、当然ニッケルが入ってないのですぐに錆びます。これでつくられたすぐ錆びる金具が建物の外部に使われ、錆や地震に弱い建築物が相当ある可能性があるとのこと。恐ろしい話です。
日本の建設業界は今、建築物の構造計算偽造で揺れていますが、それ以外にもまだ偽装があるかもしれません。建築業界だけでないでしょう。日本国中が品質を軽視し、なんでも安く、とにかく安くという風潮の結果が今回の偽装事件の本質ではないかと考えます。
■地域活動も積極的!
最後になりましたが、山谷社長は地域の活動にも積極的に参加を頂き、千代田区が取り組んだコーポラティブ・ハウス事業の第1号「コムズ・ハウス」では地権者の1名として参加を頂きました。有り難うございました。その他NTTユーザー協会の千代田地区の副会長や中小企業家同友会千代田支部などでも地域のために活躍中です。
東京の千代田区という都心で家族的経営を柱とし、地域や業界への貢献活動も行いながら、着実に成長・発展をされている(株)ヤマヤコーポレーションの山谷社長でした。
以上
【文責】財団法人まちみらい千代田 地域振興グループ 上山








