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vol.62 (番外編)技術開発の視点で温暖化防止を考える本のご紹介

2008年2月27日

  ---清水さんからゴアさんへの提言---

以前、モバイル最前線で、災害時の携帯電話の使い方をを紹介しつつ、最後に”電池が切れればただの箱”などと書きました。そのときから、「リチウムイオン電池」という存在が気になっていました。携帯電話の裏蓋をあけてバッテリーパックを見ると、<<Li-ion>>のマークがあります。1985年に発明されたリチウムイオン電池は、携帯電話やモバイルPCに利用され、今では年間10億個も使われているそうです。今やモバイル環境に欠かすことの出来ないこの電池が、温暖化防止に一役買う、そんな話を最近、本で知りました。

今回は、番外編。地球温暖化防止についてのトピックをご紹介します。


■一科学者からアル・ゴア氏への提言

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 温暖化防止のために 一科学者からアル・ゴア氏への提言
 One Scientist's Proposal to Mr.Al Gore With Regards to Solutions to the Problem of Global Warming

 著 者:慶應義塾大学環境情報学部 清水浩教授
 出版社:ランダムハウス講談社 
 出版年:2007年
 価 格:1,890円
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「90%以上のCO2を削減できる方法がこの一冊につまっている」「温暖化問題はもう解決している」といった著書の力強い言葉や、爆笑問題の太田光氏、KDDIの小野寺社長の推薦文が帯に載っているこの書籍。

温暖化対策に対する関心の裾野が広くなりつつある中、そのきっかけとなったであろう、あのアル・ゴアさんに対する提言!?しかも、提言しているのが電気自動車で有名な清水教授。なにやら興味深い組み合わせと思い、手にとって読んでみました。


■技術オリエンテッドな提言

一科学者である清水さんからゴアさんへの提言は、ずばり、「技術的な方法で温暖化に対処することは、もう出来る時代ですよ」というものです。

ゴアさんが政治の立場で温暖化について考え、警鐘をならしているのに対し、清水さんは同じ位長い間、技術開発の視点で温暖化について考えてきたそうです。

今では、電気自動車開発の第一人者として知られている清水さんですが、もともとは、国立環境研究所で環境問題の解析と対策技術の研究をされていた方。
そのこともあり、本の前半では、温暖化のメカニズムをわかりやすく説明しています。興味深いのは清水さんのスタンス。

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排出権取引、グリーン開発メカニズムなど、同じ削減でも経済的な政策を利用するもの。これらは技術開発を職業にしてきたものにとっては理解しがたい。これらの方法によっては、CO2排出を抜本的に減らすことはできないと感じるから。
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このあたりの表現は、面白いです。排出権取引をはじめて聞いた時は、目から鱗でした。ただ、清水さんの指摘も一理あります。確かに抜本的に減らすことは出来ないですね。

ちなみに、「温暖化のキーワードは赤外線」という項では、普通に手の平を頬に近づけたときと、手にビニール袋をはめた上で頬に近づけたときでは、手のひら・頬の両方で感じる暖かさが異なることを紹介しています。普通に近づけたときは手の平も、頬も暖かさ(これが赤外線)を感じるそうです。一方で、手にビニール袋をはめると、頬は暖かくならないが、手の平がどんどん暖かくなるそうで、これが温暖化のメカニズムだと説明しています。

■4つの21世紀型技術

本の後半では、技術者としての真骨頂、4つの21世紀型技術を紹介しています。「太陽電池」、「リチウム-イオン電池」、「電気自動車」、「水素製鉄」の4つです。(ここで「リチウム-イオン電池」が登場してきます。)

様々な選択肢がある中で、言い切るためには、評価軸が必要ですね。この本では、全て、
1.現実性、公平性、持続性などの「前提条件」
2.資源の制約、環境との調和などの「必要条件」
そして、
3.新たな問題をうまないか、利用は容易かなどの「十分条件」
という3つの基準で評価しています。

生きていくためには(と書くと大げさかも知れませんが、快適で便利な生活を送るには)エネルギーが必要です。何か食べる(調理する)にも、冷暖房を使うにも、移動するにも、運動するにしても(その靴、衣服をつくるには)エネルギーが必要です。

温暖化の問題で浮上する再生可能エネルギーとしては、水力発電、バイオマス、太陽電池、風力発電などがある中で、
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結論を言うと太陽電池だ
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と言い切っています。(もちろん先ほどの基準と照らし合わせて)


その上で、作ったエネルギー(電気)を貯める解決策として(リチウム-イオン電池)を紹介しています。リチウム-イオン電池の原理や構造、ほかの電池との比較や、充放電回数に対する容量の維持率などを図を交えながら解説していて、なにやらこのあたりは技術解説書の様相が濃くなっています。

電気を貯めた電池を使って走る電気自動車の歴史や、水素を使った製鉄の可能性も紹介していますが、詳しくは書籍を参照ください。


■イノベーションのジレンマへのブレークスルーは共感

最後に、技術の普及を戦略的に進める必要性に触れています。

発明発見から産業化の道のり(『技術経営の考え方  MOTと開発ベンチャーの現場から』、出川通著)を参考に、
・魔の川・・・アイディアを形にする難しさ
・デスバレー・・・試作品を商品化とする難しさ
・ダーウィンの海・・・商品を大量に普及する難しさ
といったチェックポイントを紹介。

4つの技術は、それぞれ、現在のところ、水素製鉄 = 発明発見、電気自動車 = 試作品、リチウムイオン電池 = 製品化、太陽電池 = 産業化の手前、といった状況とのことです。
それぞれの技術ごとに超えなくてはならない壁があり、各分野のリーディングカンパニーを含め、関係各位が知恵を絞っているようです。さりとて、ゴアさんの問題意識に共感する人々が増えつつあり、巷でも身の丈サイズの温暖化対策がはじまっている気がします。

清水さんは、
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身近な対策を無視してはいけない。しかし過大な期待もしていはいけない。

身近な対策を実行した上で削減に絶大な効果を持つ対策をも選択し、それを実行するしかない。その対策は新しい技術の中にある。
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といっています。

身近な対策とは別に、もう少しダイナミックな動きについて考えさせられる技術解説書でした。